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「あぁーー逃げている。アタシは本当の真実を知ってるよ……」
紫姫の頭を掴んで得意気に彼女は微笑む。
「……真実……?!」
すがるような口調で紫姫は彼女の瞳を見つめた。
「ーーそう、真実……」
ニヤリと彼女は得意気に紫姫に笑いかけた。
「アタシたちの両親を殺した男は“魔王”じゃあない……
別にいる……」
「……貴様、いい加減デタラメをーー」
「……ヒュドラ……」
ヒュドラの声を遮ったのは今度は紫姫自身の言葉だった。
「別にいるってどういうことだ?」
「……よーく思い出して」
その言葉に今までのことを思い出すかのように紫姫は記憶を辿ってみせる。
そして思い当たる節にぶち当たった。
光騎がある男を追って突然のように消えたときのことーー
酷い威圧感がこもった最凶最悪の殺意が浮かんだ表情ーー
絶対的恐怖を与えるような強さーー
そして“漆黒”の色ーー
思えばどれもが“それだ”と決めつけるには決定出来るものだった。
「……あいつがーーアタシの両親をーー」
紫姫の瞳はあの時と同じような黒いものに完全に染められていた。
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