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一馬もそれ以上、何も言わずに軽く右手だけ上げたあと教室をあとにした。
「あてはあるの?」
学校から離れ、街道を歩いていると一馬の相棒である黒太郎が呟くように声を掛けてきた。
「……あてって言っても、あそこしかねーだろ」
一馬はその呟く程度の声の黒太郎にわりとしっかり答える。
道行く人たちには一馬が一人で喋ってるようにしか見えないが誰も気にとめるものはいなかった。
「でもあそこは昨日も一昨日もその前もーーダメだったでしょ?」
「……それでもいくしかねぇよ。
このままじゃ納得出来ねぇ……」
一馬は言いながら、とある家の前で立ち止まる。
「遅かったわね」
「……なんでお前がいるんだよ」
不機嫌そうな表情でそこに立っていたのは同じクラスメイトで“異端”でアイドルでもある仲間の理央だった。
「あたしだけじゃないわよ」
「よう、一馬!!」
「あんたが一番ドベねー!!」
「まぁまぁそういうの関係ないじゃないか」
理央が返した先にいたのはもちろん、一馬の仲間と称する面々たちだった。
翔、美香、爽吾が喋っている後ろに春紫苑、光騎、聖華、京、明日香、意外なところで恭一までいた。
さすがに事情を知っているだけのフツーの人間たちのサッカー部の一部はいなかったが。
「しゃーねぇな……ま、お前らも納得いかねぇよなあれじゃ」
「エース先輩は俺らの大事な仲間だかんな!!どうなってんのか、ちゃんと知らねぇと!!!」
ボリボリと乱暴に頭をかきながら言った一馬に光騎はハッキリと強くそう返す。そんな光騎に一馬は嬉しそうに笑った。
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