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「……ふぅー……」
地和は開いていたノートパソコンをパタンと閉じて一馬たちへとやっと向き直った。
一馬は思わず身構える。
「ほれ」
しかし一馬の警戒虚しく投げられたのは封の切られた一枚の封筒。
彼の目の前でヒラヒラと力なく落ちる。
「それ読んだら帰って」
「……どういうことだよ……この手紙……」
一馬は封筒を拾い上げて地和を睨むが、彼も彼の相棒のグリムもそれには答えることはなかった。
一馬は仕方なく封筒に目を落とす。
宛先は友貴ーー
仲間たち数名も興味深げに一馬の持つ封筒を覗き込んでいた。
知らない宛先とそして李白と書かれたまたも知らない差出人に一馬が戸惑いつつも封筒から中身の手紙を取り出す。
「……読めねぇ」
「……中国語か?」
漢字いっぱいの紙面に一馬はしかめっ面をして仲間に助けを求める。
「みたいだ」
京の問いに一馬は困ったように答えた。
「ボク、読めるよ!」
「なんで読めんだよ!!!」
なぜか中国語が読めるという黒太郎に一馬はつい突っ込みを入れてしまう。
「ああ、一馬気にしないで。住民には言語感知能力というのが備わっていてどこの世界に行っても言葉が自然と分かってしまうんだよ」
黒太郎のことを簡潔にクリスが説明してくれた。
まぁ黒太郎だけじゃなくて住民全員のことだが。
「万能なのね……住民……」
理央が少しだけ羨ましそうだったのは多分気のせいじゃない。
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