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『ドル~ドル~』
近付く擬音。
やがてドアの直ぐ外で、あの声が聞こえた。
那智「部屋の前まで来てる。どうしよう……なんで?」
思わずベルトはしていないかと、パジャマから着替えてもいないのに腰に手をあて触る。
那智「(お……落ち着け私……ゆっくり息を……)」
自分に話し掛け、呼吸をゆっくりと繰り返した。
―ピンポン―
部屋にコール音が鳴り響く。
那智「!! (マジで来た!)」
体が硬直し冷たくなる。
延長コードを持つ手がうまく言うことを訊かない。
もうパジャマだとかどうでもよく……いや、そんな物は頭の片隅にも無かった。
逃げる。
それのみが自分を支配している。
那智「大丈夫…… (落ち着いて)」
深呼吸ひとつ。
スリッパのパジャマ姿にカーディガンを羽織り、何度も鳴り響くコールを無視し、窓から延長コードを伝い外に出る。
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