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「おうぉ~……お姉ちゃん大丈夫か? どうしたんやパジャマとスリッパなんかで」
豪快にスッ転んだ横には小さな屋台があった。
文字は“たこ焼き”と書いてある。
声をかけて手を差し伸ばしてくれたのは、どうやら“たこ焼き屋台”のお兄さんのようだ。
確かに“たこ焼き”を焼きそうな雰囲気の関西弁なお兄さん。
那智「ぁ……」
那智は恥ずかしいよりも先に“助けて”という願いに支配される。
たこ焼きのお兄さん
「大丈夫か? 立てるか?」
那智「あ……ありが」
安心した所為か、手を伸ばしながら那智は知らず知らず、ボロボロと涙を流していた。
たこ焼きのお兄さん
「ど!! どないしたんや!! どっか痛むんか?」
お兄さんはギョッと驚いた顔をし、顔を赤くする。
那智に近付き身体を気遣う。
那智「いえ……恐かっただけで……大丈……」
那智は泣きながら笑い、鼻をすすって話した。
その時、お兄さんの手が那智の頭にポンとのり、くしゃくしゃと撫でる。
たこ焼きのお兄さん
「“部下”がよっぽど恐かったんやな……」
ぽそりと呟いたお兄さんの言葉は聞き取れなかったが、那智はすっかりそのお兄さんに心を許してしまった。
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