~一章・生誕と云う罪~

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静かな夜に一つの部屋で 一人祈る男性と それを見守る一人の老人がいた。 「そんなに 祈っても結果は変わるまい」 老人が男性を心配して 語り聞かせるように声をかける。 男性は静かに首を振り 言葉を紡ぎだす。 「それでも、祈らずにいられません。 妻と子の無事を、…」 「ふむ…」 老人は男性の言葉に 同調するように、一つ頷く。 「それにしても遅すぎませんか? 私は心配で心配で……」 「たしかにのぅ、しかし 信じてやれ、自分の子と妻だろう」 老人は冷静にしかし どこかそわそわしながら男性に語る。 「旦那さま!!」 そこに一人のメイドが あわてて入ってくる。 「騒がしいぞ、静かにしろ!」 それを老人が咎める。 「すいません御隠居」 「まあよい、してどうした」
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