覚えてる?

2/3
前へ
/3ページ
次へ
記憶はあるの。 自分が知るはずのない記憶が、ポロポロと言葉になる。 だけど、自分が何故、この身体に…この家の娘に生まれ変わったのかしら。 私達の魂を同じ屋根の下に生かしてもらえて、とても安心です。 でも、惠が慕う一(はじめ)さんを、惠が産んだの。 どうしてかしらね。 でも、懐かしい。 昭和の時代、私達は身体を喪い、魂となった。 神社や寺を飛び回り、さ迷っては、一さんをさがしてた…。 気付けば、今日。 平成24年。 赤ちゃんが話し掛けてきた。 "お前はん" 懐かしい言葉だった。 古い古い、金澤の言葉で。 私は、あっというまに前世と呼ぶのかしら、(通子)の記憶が頭の中に溢れた。 そう言えば、うちで飼ってる猫、次郎長って名前なの、笑えない? 清水の次郎長のつもりだったんだけど。 "長治んとこの猫ですよ" 御寺はんのお弁当、食べたんでしたかいな? "ひっくり返して逃げたから、もったいない思うて、兄さんが食べてあげはったんです"image=450109583.jpg
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加