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記憶はあるの。
自分が知るはずのない記憶が、ポロポロと言葉になる。
だけど、自分が何故、この身体に…この家の娘に生まれ変わったのかしら。
私達の魂を同じ屋根の下に生かしてもらえて、とても安心です。
でも、惠が慕う一(はじめ)さんを、惠が産んだの。
どうしてかしらね。
でも、懐かしい。
昭和の時代、私達は身体を喪い、魂となった。
神社や寺を飛び回り、さ迷っては、一さんをさがしてた…。
気付けば、今日。
平成24年。
赤ちゃんが話し掛けてきた。
"お前はん"
懐かしい言葉だった。
古い古い、金澤の言葉で。
私は、あっというまに前世と呼ぶのかしら、(通子)の記憶が頭の中に溢れた。
そう言えば、うちで飼ってる猫、次郎長って名前なの、笑えない?
清水の次郎長のつもりだったんだけど。
"長治んとこの猫ですよ"
御寺はんのお弁当、食べたんでしたかいな?
"ひっくり返して逃げたから、もったいない思うて、兄さんが食べてあげはったんです"
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