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少年の手からは血が滴り落ちていた。
少年がいるのは不気味な神殿。もともと意味を成さず、インテリアとして置かれていた柱は1つ残らず倒されていた。壁や地面にはびちゃびちゃと血液や、臓物のような物がへばり付いている。
とても現実とは思えない光景。まさに、現世に顕現した地獄がそこにあった。
「う……うぇっ」
黒髪の少年は、鼻をつくあまりの悪臭に戻してしまった。神殿の床を踏みしめるもう1人の男――黒いコートにシャワーのような返り血を浴びたその男は、不気味に光る紫の瞳でただ空を見つめていた。
男は足元に転がった肉塊をぐちゃぐちゃと踏みにじり、少年のほうを向き直る。
「俺と共に来るのなら、もっと『死』に慣れてもらわんとな。
さて…長居は無用だ。早く魔神の書を見つけなくては……。」
少年はどうやら腰が抜けて立てないようだったが、男は少年の腕を無理につかんで立ち上がらせ、連れ出した。
★☆★☆★☆
魔法。
それは時として邪悪を祓い、時として国を滅ぼす。
『魔法』の発生は、遥か昔に遡る。
この世界には2つの大陸がある。
1つは神を信じない人間が支配する大陸『アジャー』、もう1つは神を信じるエルフが支配する大陸『ウィジャー』。
魔法が発生したのは、大陸『ウィジャー』のみだった。
かつて、突如『ウィジャー』に発生した『魔物』。
魔物達の目的、魔物達の司令塔…未だに定かではないが、魔物達はエルフを蹂躙し、貪り尽くそうとした。
エルフの数は本来の2割程度まで減少してしまったが、残されたエルフは必死に神に祈り、自分達が助かる事を願った。
そして…神はエルフ達に自らを守る力を授けた。
それが魔法だった。
魔法の力を得たエルフは魔物と戦いを繰り広げ、勝利した。
その後、エルフは新たに生まれてきたエルフに魔法を教えるため、此処『ファルシオン魔法学園』を建設した。
…そして何故、そこに諸君ら人間がいるのかは…君らが一番良く知っているだろうが…その辺りも一応授業でやるので、きちんと歴史勉学にも励むように。
―――――以上、校長先生の…
馬鹿者!!わしは話を終えるとは言っておらぬわ!!
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