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『しばたは、絵が好きなんだね』
『うん、好きっ!』
辺り一面を包むような薄桃色。
何処からか吹いている風に舞う花びらは、桜。
……という事はまたあの夢、なんだな。
そこにいるのは、いつかの俺。
いつだか知らない、でも小さい頃の俺。
それは記憶に無い、思い出のようなもの。
『--も、しばたの絵……す、好きだよ』
『ほんと!?ありがと、--!』
この夢の不思議は、俺と一緒に居るもう一人の子供の名前が聞こえないこと。
あの、フードを深く被って顔を隠している子は、一体誰なんだ……?
名前は、いつも砂嵐のような雑音で消されてしまう。
『それじゃあ--を描いてあげる!じっとしててね!』
『えぇ、や、やだよ、恥ずかしいし…』
『なんで?--は、僕の絵、嫌い?』
『そ、そそっ、そんなことない!!』
『じゃあ、ほら!服のぼーしを外して、こっち向いて?カオが見えないとかけないから!』
その子は、小さい頃の俺にフードを外されて顔を上げようと……
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