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「天使だ」
少年は私を見るなりそう言った。
「あいにく天使ではありません」
「じゃあ何?」
「死神です」
私の答に少年は首を傾げる。
「変なの。そんな綺麗な羽根があるのに、死神だなんて」
綺麗な羽根?
この真っ黒な、巨大な鴉のような翼のどこが綺麗だと言うのか。
おおかた、私が背にしている朝日の明るさに、錯覚を起こしているのだろう。
「天川昴(あまかわすばる)くん、ですね」
「そうだよ」
死神としての、もう幾度目か分からない仕事の対象。それが今回はこの少年であった。
幾億とある命の中で、死という運命に魅入られてしまった、ただの一人の少年。
これより私は彼を正しい死に導くと共に、彼の死への経緯を報告する、一連の文書を記すこととなる。
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