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「やりにくい…」
病院の屋上に腰を下ろして、私は誰に言うでもなく呟いた。
これが死神と人間の関係でなく、例えばただの同級生であったら、彼とはとても良い関係を築けただろう。
だが彼を第三者的に観察しなければいけない立場としては、やりにくい事この上ない。
(やめたい…心底、やめたい)
出来るならばこの担当を降りたい。
人間がするように辞表を叩きつけてみたい。
というのは死神に生まれてしまった以上、到底無理な願いである。
担当になってしまったからには、報告書を完成させなければならない。
それに未練がないとは言っていても、どこかに正しい死から外れる要素があるかもしれない。
いつもの通りに報告すれば良いだけだ。
当然私にはそれが出来ると――この時はまだ、そう思っていた。
【2XXX年X月X日 観察開始】
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