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それは、ある日突然やってきた。
カシャッ
「やぶくん、じゃ、笑おうか!」
いつも通り、雑誌の撮影をしてるとき、いつも通り笑顔の要求をされた。
別に、なにも変わったことはない。
なのに、
(…………あれ?)
笑顔が作れなくなったのだ。
本当に突然の出来事に、案外冷静な自分がいたことにも少しびっくりだったが、とにかく、笑顔が作れないなんて仕事にならない。
「すいません、少し休憩もらえますか?」
スタジオからでたのはいいものの、楽屋にはメンバーがいるから戻れない。
屋上へでてみた、空は青々として広かった。
(………なんで急に笑顔がつくれなくなったんだろ……俺、アイドル失格じゃん笑)
雲が形をかえながら俺の頭上を過ぎていく姿を呆然とみながらいろいろ考えてみた。
だけど急に笑顔がつくれなくなった理由はどんなに考えてもわからない。
(……ほんと、アイドル続けられないじゃんか。)
「やぶ、大丈夫?」
いきなり声をかけられて振り返ると、ニッと八重歯をだして笑うひかるがいた。
「ひかる…。笑顔ってどうやってつくるんだっけ?」
多分、俺は無表情だったと思う。
だって笑い方を思い出せないから。考えれば考える程、笑顔の作り方がわからなくなってしまった。
「うーん…まず、その“作る”って考えをやめようか。」
“作る”という考えをやめる、意味がわかんない。
「あのね、笑顔って作るものじゃなくて自然と出るものなんでしょ?」
また、ニッと八重歯をだすひかる。
『笑顔って、作るもんじゃなくて自然にでるものなんだよ!だから、楽しいことを思い浮かべてみて!』
「………あ。」
昔、俺がひかるに言った言葉だ。
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