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―――――カンカンカンカン……
すぐ近くで踏切の音がしている
「~~~る! ~~はる!」
深い水の中で息苦しさから逃れようと、水面を目指して浮き上がるように急速に意識がはっきりしてくる。
そこでは誰かが自分の名前を呼んでいた。
「~もはる!! ともはる!!!」
目を開けると、そこには必死に俺の名前を叫んでいる男がいた。
「………ぅ………」
「良かった、気が付いたんだな」
早口で何かを言っているが聞き取れない。
俺自身、声を出そうとしてもその為に必要な身体の器官が言うこと聞いてくれず、息は掠れて声にならない。
「さっき救急車呼んだからもう少しだけ頑張れ!!」
また何かを言っている。今回はなんとか聞きとれた。
言葉の断片からして、どうやら俺は相当ひどい状態らしい
たしか今日は高校の卒業式で帰り道、踏み切りを渡ろうとして…………………そこからの記憶がないことから多分それで今の状況に、だな
不思議と死にかけているにも関わらず頭は冴えている
しかし、それもすぐに終わり
「……灯春?……おい!しっかりしろ!おい!」
何も言い残せず俺の人生は終わった。
筈だった。
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