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「……何だ?」
「ふふ、あのねセーサイ」
優しく頭を撫でてやると、くすっぐったそうに笑っている。
滑らかな感触がこちらとしても心地よい。
絹糸のような純白の髪が月明かりに照らされて艶々と煌めきを放つ。
「オレにもセーサイみたいに名前がほしい。名前、あったのかもしれないけど、何も覚えてないから。だから……セーサイが新しいのをつけて?」
にこにこと屈託なく笑う姿が微笑ましかった。
名を欲しがるとは、ますます人間じみている。
名がないと呼ぶ時に不便だ。名をつけてやるというのも悪くない。
「そうだな。では……蘭丸、としようか」
「ランマル?」
「そうだ。お前は清楚で優美な白い胡蝶蘭の花のようだからな。普段は“蘭”と呼ぶことにしよう」
鬼のくせに、寒いのを嫌うところもまた蘭の生態に似ているからな。
毎夜、寒いと言いながら私の布団に潜り込んで身を寄せてきて、暖めてやるとすぐに寝息をたて始める。
そんなところも人間の子供のようで可愛らしい。
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