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「セーサイ!?……どこか、痛む?オレ、撫でてやろうか?」
蘭はむせび泣く私を見て、ますます慌て始めた。
「大丈夫。オレが痛いの、なくしてやるから」
私の手を取り、ぎゅっと両の手で包み込む。
その手があまりにも冷たくて、はっとした。
来たばかりの頃は確かに温かかったのに。
身体が衰弱しきっていて、体温を失いつつあるようだ。
このままでは、間違いなく蘭は弱って死んでしまうだろう。
そう。
人間を、喰らわない限り──。
「……あれ?オレ、力が使えなくなってる。セーサイの痛いの、治そうと思ったのに」
自身の手を悲しそうに眺めながら、蘭が俯いた。
本来、鬼は魔力をその身に秘めている。
力を使えば傷を治すことも出来たのかもしれない。
だが今の衰弱した蘭では無理だったようだ。
「いいんだ……どこも痛くはない、私は平気だ……」
もし力など使ってしまえばますます弱ってしまうというのに、自分の身よりも私の心配をしてくれた蘭。
胸が苦しくて、張り裂けそうだ。
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