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「蘭……」
「……セーサイ?」
思わず蘭の身体を抱き締めずにはいられなかった。
華奢な身体は少し力を込めれば今にも折れてしまいそうだ。
「セーサイ、こっち向いて?」
「ん?どうした……?」
腕の中の蘭を見下ろす。
その瞬間、蘭がそっと背伸びをして私の頬をぺろりと舐めとった。
「大好きなセーサイが泣くの、オレ、悲しい。だから、笑ってよ」
驚いて目を見張っていると、蘭がそう言って私を見上げて微笑んだ。
その愛しい笑顔を見た瞬間、私は決意した。
「蘭……私を喰うと約束してくれないか?そうすればもう、泣くのはよそう」
「ぇ……?」
蘭の目が真ん丸くなる。
「私を喰らえば、蘭の身体は良くなる。力もまた甦るだろう。それが……私の望みなんだ」
陰陽師である私は普通の人間よりもずっと力を持っている。
私の魂を喰えば力が漲り、蘭は永く生き長らえることが出来るだろう。
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