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──オレはずっと1人だった。
気付いた時にはすでに1人で。
お腹が空いてたまらなくて竹林の中をうろうろしていたら、朽ちかけた神社に行き着いて。
狐色のモノが供えてあったからつまみ食いしようとしたら、
「こらぁーっ!!」
って、雷みたいな大きな声で怒鳴られた。
ばふん、と柔らかいモノが顔を直撃して、オレは狐色のそれを取り落とした。
ビックリしていたら、目の前に誰かが立っているのが見えた。
「私の油揚げを盗み食いしようとは、まさに神をも恐れぬ所業。どうやって懲らしめてやろうかのぉ」
着物を着たやたら偉そうな人が、オレが落とした狐色のモノを手に二ヤニヤ笑いながら仁王立ちしてる。
姿形はオレに似てるけど、ちょっと違う。
髪と目は金色で、狐みたいなふわふわした耳と大きな尻尾がついてるのが見えた。
あれ、触ったら気持ち良さそう。
さっき顔に当たった柔らかいモノはきっとあの尻尾だったんだな。
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