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「狐……?」
「し、失敬な!狐が喋るか、馬鹿者っ!私はこの稲荷神社に祭られている狐の神様、オキツネ様だっ!」
ほら、やっぱり狐なんじゃないか。
それに、神様のくせにうるさいし。
自分で“様”をつけるあたり、偉そうで変な神様だなぁ。
「オレ、ハラ減った」
「人の話を聞かぬ奴じゃな、お前は……。鬼の子が油揚げを食ったところで空腹は満たせぬぞ。お前の喰うべきは、人間の魂だ」
オキツネ様はそう言って遠くの方を指し示した。
振り返ってみると、お参りを済ませて神社から帰っていく人達が見えた。
オレは目がイイから遠くてもはっきりとその姿が見える。
オレに似てるけど、髪の色が黒いし、角もない。
「あれが、ニンゲン……。全然うまそうには見えないけど」
魂なんて、どうやって喰うんだろう。怖い。考えたくもない。
「可哀想に。食欲のままに人を喰らう低能な鬼どもとは違い、お前は魔力が高すぎて自我が芽生えてしまったようだ。……が、そんな甘いことを言っていては飢え死ぬぞ鬼の子よ」
オキツネ様の言ってることは難しくてよくわからなかった。
でも、ニンゲンの魂を喰わなきゃ死ぬってことだけはちゃんとわかった。
「喰いたくない。そんなの、怖いし、嫌だ」
そんなモノより、さっきの“アブラアゲ”とかいう狐色のモノの方がずっと美味しそうだ。
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