平安幻夜録~魂、満ちる刻~

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「お前……物欲しそうに油揚げを見つめるのをやめんかっ!」 「……美味そう」 オレの腹がぐぅぅ、と鳴った。 「…………。仕方がない、一つだけやろう。まぁ、食っても腹は満たされぬだろうがな」 「やったぁ!ありがとう、神様っ!」 ため息と一緒に渋々差し出されたアブラアゲを受け取って、頬張る。 柔らかくて、ちょっとだけ甘くって、思った通り美味しい。 「尻尾、触ってもイイ?」 食べ終わった後、“賽銭箱”と書かれた木の箱の上で足を組んで腰掛けている神様に聞いてみた。 さっきから、箱の上でばふんばふんと揺れ動いてる狐色の尻尾が気になる。 「駄目だ。……って、コラっ!!」 オキツネ様が答えるより先に、我慢できなくてオレは尻尾に飛び付いた。 やっぱり柔らかくてふかふかしてて、気持ちイイ。 それに、太陽みたいな匂いがする。 オレは嬉しくなって、頬擦りしたり、抱きかかえたりした。 コレ、枕にして寝たいな。
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