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「っち……罰当たりな奴め」
オキツネ様には舌打ちされてしまったけど、無理矢理引き離されたりしなかったから、しばらく尻尾を堪能した。
隙をついて耳をむにむにしてみたら、さすがに怒られてしまったけれど。
「魂を喰わずに済む方法は一つだけある。朽ち果てる前に、心を通わせた人間にその魂を分け与えてもらうことだ。さすれば鬼ではなくなってしまうがな。さぁ、行け。健闘を祈っているぞ」
相変わらずオキツネ様の言ってることは難しかったけど、神社から追い出されてしまったから仕方なくオレは歩き始めた。
人間の魂をもらうなんて……一体どうすればイイんだろう。
それって、喰うより難しそうだ。
そして、オレは何日も彷徨い歩いたけれど……
ついには空腹で力尽きて倒れてしまった。
──衰弱のあまり記憶を失って再び目覚めた時、オレはセーサイを見つけた。
深い藍色の長い髪が風に揺れていて。
切れ長の優しい光をたたえた空みたいな色の目が、オレの姿を捉えるなり大きく見開かれる。
すごく綺麗な顔をしているのが印象的だった。
セーサイの身体からは、不思議な力がみなぎってるのが分かった。
そのおかげか、出逢いの瞬間にオレの消えかけの魂は少しだけ元気になったんだ──。
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