平安幻夜録~魂、満ちる刻~

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「蘭……大丈夫か?」 セーサイが心配そうな顔でオレの額を優しく撫でてくれる。 大好きだったこの仕草。 だけど身体の感覚がなくて、もう何も感じない。 確かに触れられているのに、セーサイの温もりがちっともわからない。 悲しくて、 寂しくて。 涙が込み上げてくるのを必死で我慢した。 「うん。平気」 本当は寒くて身体が重いけれど、セーサイに心配をかけたくなくてオレは嘘をついた。 笑ってみせると、なんでかな?すごく悲しい顔をされてしまった。 セーサイは頭がイイから、オレが嘘をついて無理やり笑ったコトに感付いたのかもしれない。 「セーサイ、オレ、夢を見たんだ。昔の夢」 おかげで、失っていた記憶を取り戻すコトが出来た。 オキツネ様に言われたコトも、全部。 それを話したら、セーサイは眉をぎゅっとして難しい顔になった。 「魂を“もらう”……?喰らうのと、どう違うんだろうか?死なずとも私の魂を蘭にやる方法があるというのか……」 ぶつぶつと呟いてるセーサイ。 オレにはわからなかったオキツネ様の言葉の意味も、もしかしたらセーサイにはわかるかもしれない。 そう思ったけど、セーサイは厳しい顔で唇を引き結んだまま黙り込んでしまった。
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