370人が本棚に入れています
本棚に追加
「蘭……大丈夫か?」
セーサイが心配そうな顔でオレの額を優しく撫でてくれる。
大好きだったこの仕草。
だけど身体の感覚がなくて、もう何も感じない。
確かに触れられているのに、セーサイの温もりがちっともわからない。
悲しくて、
寂しくて。
涙が込み上げてくるのを必死で我慢した。
「うん。平気」
本当は寒くて身体が重いけれど、セーサイに心配をかけたくなくてオレは嘘をついた。
笑ってみせると、なんでかな?すごく悲しい顔をされてしまった。
セーサイは頭がイイから、オレが嘘をついて無理やり笑ったコトに感付いたのかもしれない。
「セーサイ、オレ、夢を見たんだ。昔の夢」
おかげで、失っていた記憶を取り戻すコトが出来た。
オキツネ様に言われたコトも、全部。
それを話したら、セーサイは眉をぎゅっとして難しい顔になった。
「魂を“もらう”……?喰らうのと、どう違うんだろうか?死なずとも私の魂を蘭にやる方法があるというのか……」
ぶつぶつと呟いてるセーサイ。
オレにはわからなかったオキツネ様の言葉の意味も、もしかしたらセーサイにはわかるかもしれない。
そう思ったけど、セーサイは厳しい顔で唇を引き結んだまま黙り込んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!