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「コレ……、ナンだ?」
それどころか額に張り付いた札を呆気なく剥がし取り、物珍しそうに手に持って眺めているではないか……っ!
巷では、恐れ多いことに都一番の天才陰陽師などと言われている私だが、そのような呼称はやはり自分には相応しくはないようだ。
今まで数え切れない程の鬼退治をしてきたが、このような事態は初めてだ。
この子鬼、やはり能力がとんでもなく高いらしい。
嫌な汗を背中に感じながら、どうしたものかと思案する。
鬼は人間の魂を喰らう種族。
術が効かないとなるとこちらが殺されて喰われてしまうかもしれない。
ぐぅ~、きゅるる……。
私のそんな心配は、子鬼の腹が盛大に鳴ったせいで余計に真実味を増す。
「ハラ、減った。オレ、目覚めてから何も食ってない」
腹を押さえながら悲しそうに視線を落とす姿は、やはり少年のようにしか見えない。
いや、類稀なる異色の美貌はやはり人外なものだが。
この子鬼──、
驚く程に人間らしい動作をする。
この私が、退治することを躊躇ってしまうくらいに……。
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