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「人間を襲って喰らうつもりであろう?そのようなことはこの私が許さぬ」
いくら姿は可愛らしくとも、相手は鬼なのだ。
油断は出来ないし情を持つなど危険。
術が効かないとなると斬り殺すしかあるまい。
私は懐に忍ばせてある小刀刀を素早く取り出した。
「ニンゲンって、何だ?よく、わからない。オレ、気付いたらここに倒れてた」
しかし驚いたことに、子鬼は刀を向けられても顔色一つ変えない。
その上、人間が何かも分からないという。
察するに、記憶が欠落してしまっているのだろうか。
何も知らない無垢な子供と話しているような錯覚を覚えてしまう。
「私のような者が人間だ。鬼というものは人間を殺しその魂を喰らって生きている」
不思議とそんな言葉が口をついて出た。
教えたら最後、自分が喰われてしまうかもしれぬというのに。
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