終わりは始まり

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『自分の子供を生け贄に 差し出すなんて…。』 『どうゆう神経を してるんだ。』 『賞金に目が眩んだとしても 酷すぎる…』 『美人なのに性格 悪いなんて勿体ない』 母親は周りから聞こえる 小さな批判に堪えている 様子はなかった。 美しく真っ白な肌 艶やかな黒い髪。 小さな顔。 大きく黒目がちな瞳。 華奢ではあるが、手足の長い スラリとした体型は水の国に 住む人々の特徴だった。 その母親は特徴を存分に 活かし、王の隣に座る姫よりも 美しい外見をしていた。 そんな美しい母親の娘である 女の子もまた可愛らしい 顔をしていた。 生け贄には相応しい 可愛らしさに王は女の子を 生け贄としてモンスターに 差し出す事を決めた。 王「その者…名を名乗れ。」 ヒナ「はい…私の名前はヒナ と申します。 そしてこれが娘のナラです。」 ヒナが頭を下げるのを見て ナラもペコリと頭を下げる。 5歳になったばかりのナラは 生け贄の意味を知らず 暴れたり逃げ出す事もせずに 大人しくヒナの隣に立っていた。 王「そうか…。 私は一刻も早く生け贄を 差し出し、モンスターから人々を 守りたいのだが…。 今日の夜で構わないか?」 ヒナは王の言葉に悩むことなく 「はい」と答える。 ヒナの愛情はナラが産まれた時から 無く、あるのは嫉妬による 憎しみだけだった。 父親が男の子を望んでいた事が幸いしたのか、ナラを可愛がる事はなくヒナからの暴力を受けることはなかった。 今ヒナの頭の中は賞金の事で いっぱいで、5年間育てた 娘が今日死ぬ事など 気にもとめていなかった。
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