9章 傭兵大国

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◇◇◇ 「あらら~・・・派手に怪我したわね」 ティートの状態を見て、メイは苦笑いを浮かべた。 ここにプリーストはいない。 即ち、ルサルカやリゴレットにこの姿を確実に見られる事になる。 「げ、げぇっ、どうしたんだいそのエライ怪我は」 「ティートさん!?大丈夫ですか!!」 追って合流したフィデリオ、イドメネオもその姿に驚きを隠せない。 同じように、魔女二人の怒りと悲しみの表情がそれぞれ浮かび、苦笑い。 「幸いにも骨が折れてるだけです」 タチヤナが介抱しながら、傷の状態を終始確認する。 「十二夜のリーダーは?」 メイはスライの姿を探す。 生け捕りではない───。 「───ここだ」 セストは袋に詰まった丸状のモノを差し出す。 「潰されて下は見るに耐えなかったので、仕方無く首だけを・・・」 圧死の姿は運ぶには重労働だ。 首を狩ったのはセストだが、タチヤナもその意向には賛成していた。 残酷な様に見えて、配慮もある。 「任務完了ね。さっさと戻りましょう♪」 異常なやり取りにも見えるが、受けた依頼の絶対完遂が傭兵としての仕事である。 「(───この斬り口・・・あの行商人がやったのか。"愛の妙薬"───あの女以外にも女主体のギルドがある)」 セストはラゴスの脇腹の裂かれ具合を見て、レナートの剣撃と見比べた。 "脊髄を裂く剣"───。 それがレナートの唯一無二の武器だ。 「(───俺の剣撃では、こうはならない、か)」 セストの実力は、まだメイには及ばない。偽っているとはいえ、行商人の実力に劣るのだ。劣等感はあった。
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