9章 傭兵大国

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(───ズバァッッッ) 「ぐはぁっ!!!」 そこが急所であるかないかは関係無い。 深く斬れば、どんな場所でも動きは止まる。 「悪いわね~、これでも行商人歴は長いのよ。良い行商人には良い武器がお似合いでしょ?」 ナイフでも殺傷力に優れる逸品───ペシュカト。 流れる様に皮膚を抉る、暗殺者(アサシン)御用達の"キルナイフ"である。 ラゴスは治療の施し様が無いほど、脇腹を抉られた。 「どうする~?生け捕りがいい?それとも首だけになる?」 次第に傭兵の口振りに変わっていくメイ。国境警備には、首を持って来ると言っている。 生け捕りならば当然受け取れる賞金も上がるが、ただの討伐であるメイにとってはどちらでもいい事だ。 「・・・まだ、終わってねぇ(─────ズバァッッッ)」 ラゴスが命を削って覇気を出すよりも早く、メイのナイフがラゴスの首を裂いた。 「───終わりよ」 メイの冷酷な視線がそこにあった。 セストと同じで、メイもまた闇ギルドを壊滅する意思もある。 そんな埒の明かない意思よりも、行商人として大陸を駆け回る方がよっぽど有意義だ。 「・・・すぎる」 「強(つよ)・・・」 ロドルフォとカッシオは同時に言葉を繋げた。 今まで必死こいて守っていた"お嬢様"が、自分達より遥かに強いと見せつけられれば呆然ともなる。 「国境警備の方が絶対強いじゃない・・・。悪どい奴らね」 国境警備兵も、その気になれば闇ギルドの一つや二つ簡単に潰せるはずだ。 せしめた何割かを口止め料に貰っていた可能性もある。 法人ギルドとは言え、結局は金目・・・。腐敗しているものだ。 「彼らの部下に投降を促して~。これ以上戦っても無駄よね」 草臥(くたび)れた様子で首を鳴らして、あとの始末は二人に任せる。 部下の一人が投降の笛を鳴らすまで、時間はかからなかった。 数分してスライが向かった方向から知らない顔がゾロゾロと現れれば絶望もする。
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