9章 傭兵大国

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◇◇◇ 「お、おい・・・見ろよ」 「・・・マジかよ」 「馬鹿、尻尾を巻いて逃げ出して来たに決まってるだろ」 日暮れ前に戻って来たメイ達を見て、傭兵はざわついた。 そのどれもが、おめおめと逃げて来た腰抜け風情と嘲っていたが、メイらの自信に満ちた表情を見て、脂汗が流れる。 「時間には間に合ったわね。さ、ご依頼の品よ」 隊長の前にズイと出て、メイは首の入った皮袋を差し出した。 「・・・・・・確かに」 袋の中を見て、それがスライとラゴスの"もの"であると認識する。 それを聞いて、他の傭兵達も苦笑いを浮かべるしか無い。 「これで、入国させてくれるわよね?」 「・・・仕方ない」 ここまで来て、約束を反故にするなど出来はしない。 大金は入るが、"安請け合い"したものだと、隊長は僅かに溜め息をつく。 ───一方で、ルサルカはムッとした表情を崩さない。 「・・・うちの要が一番重症みたいだけど、どういう事かしら?」 ルサルカはティートの"ドえらい"怪我を見て、メイを睨みつけた。 「やーね、そんなに怖い顔しないでよ。ちゃんと生きてるんだから、問題無いでしょー?」 一方、メイは悪びれる様子も無い。 回復魔法があれば、重度の怪我も時間があれば完治が可能なのだ。 ティートもそれがわかっていて、飛び降りという無茶をしでかしたと言える。 だが、一歩間違えれば死んでいた状況だったのは確かである。 結果オーライと言えば都合良く丸く治まる、何ともその場逃れのメイの口振りだ。 「はぁ・・・無茶したのね」 いつかは大怪我をすると思っていたルサルカだ。怒りや呆れはほんの一瞬で、あとはティートの身を案じる優しい顔になっている。 なんだかんだで、ルサルカも内心では心配性で過保護なのだが、本人はあまり自覚が無い。 「・・・悪い」 ティートは傷む肋をおさえて、素直に謝った。前線に出たいと願った結果がこの不甲斐ない姿だ。言い訳や次への抱負も出てこない。
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