9章 傭兵大国

86/92
前へ
/888ページ
次へ
「全く・・・母親が泣いてるわよ」 ルサルカは前髪をかきあげて、リゴレットを見た。ルサルカが冷静でいられるのは、一重にリゴレットが"冷静では無い"お陰である。 「ルカー!!ティートが死んじゃうよ~!!」 リゴレットは子供の様に(まだ子供だが)泣き喚いて、ティートとルサルカを交互に見ながらライブの杖を矢鱈に振りましていた。 「か、母さん、落ち着いてくれ・・・俺は大丈夫だって・・・」 傷みで声もまともに出ないが、半分はリゴレットの余りの取り乱しように罪悪感で声が詰まったと言う裏事情もある。 母親を心配させるのは親不幸者だ。 ───可愛ければ尚更だ。 「はぁ・・・マルグリットも手伝ってあげて」 リゴレットは泣いて泣いての空振り連発だ。埒が明かないので、ルサルカはマルグリットを呼ぶ。 「・・・しょうがありませんわね、ほらリゴレット、一緒にやりますわよ?」 リゴレットの肩に手を置いて、落ち着かせる。 「ひっく・・・うっ、うんっ、ティートっ、すぐ治してあげるねっ」 「(あ~・・・泣いてる母さん可愛すぎる)」 ティートは親不幸者だの罪悪感だの考えていたが、しまい目には不謹慎にも泣いてる母親に萌えていた。 「・・・あとは任せて、馬車の中でゆっくり休みなさい」 ティートがにやけてるのは気付いていたルサルカだが、敢えて突っ込まず、討伐メンバーに休養を命じる。 「悪い・・・俺がもっと強かったら」 それを素っ気ないと受け取ったか、ティートはルサルカに劣等感を口にした。 「・・・炎の剣は使ったの?」 弱音が来るのは予測済み。ルサルカは用意していた言葉を選んで口にする。 「・・・1回だけ。あとは不発だった」 「1回でも発動すれば上出来よ。でも、暫(しばら)くは使わせないから」 怪我のティートの代わりにタチヤナが預かっていた炎の剣を受け取って、ティートから遠ざける。やはり使うには早すぎたし、逆にそれを使った事でこれだけの怪我に繋がったのだと、若干の後悔もしていた。
/888ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加