9章 傭兵大国

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「魔法・・・ちゃんと教えてくれないのか?」 これを期に魔導を教わるつもりだったのか、ティートは出鼻を挫かれる。 「・・・二足の草鞋(わらじ)を履くつもり?」 「・・・最初は剣だけで───って思った。けど、魔力を発散してから自分の中に魔力がグルグル回ってるのがわかる。発散させたくてウズウズしてるんだ。炎の剣を使った時、すげーすっきりしたのは覚えてる。・・・外したけど」 ライブを受けてまともに喋れるくらいにはなったのか、ティートは饒舌に魔力への思いを伝える。 初めての魔力の発動で、ティートの中で穏やかに渦巻いていた魔力の流れが一気に溢れ出た。 その反動からか、体内では絶えず魔力がうねりをあげ、発散したいと声をあげている。 「(・・・確かに、ね。私達の魔力を鱈腹(たらふく)食べれば、魔力もつく・・・。剣と魔法を使う"男"。それこそ屈指の魔剣士になれる)」 頭の中で将来の勇姿に思いを馳せつつも、やはり生半可な状態で教えるには懸念もある。 「・・・まだ駄目よ」 ルサルカは少し間を置いて、魔導指導を断った。 全属性の魔力を食ったティートであれば、イコール全属性の魔法を扱える。 風、雷、炎───。 そして、食った属性の比率でその力も変わってくる。 最も多く食った魔力は当然風。 そして次に炎。 大半がトスカ派に流れた雷属性の魔女からは、あまり多くを供給されていない。 アルスマグナの使用条件───全ての属性を均等に受け継ぐ。と言う条件は、この段階で失敗に終わっている。 当時同格の力を持ったルサルカ、イゾルデ、トスカのうち、魔力を供給したのはルサルカとイゾルデだけなのだ。 その時点で【風炎〉〉〉〉〉〉雷】と言う極端な供給率が出来上がってしまっている。 だが、実を言えばアルスマグナの使用条件も曖昧で、その均等供給が果たして何処まで正確なのかもはっきりしていない。 ルサルカはグラウデンに寄ったついで、ティートをアルスマグナと"面通し"させるつもりだった。 それで、何かが分かる事もある。 魔導講習については、当然属性ごとに"担任"も変わる。 ルサルカは、先生としては不向きだと自分でも感じていた。 魔法を教えるのなら、イゾルデが適任者と考えているのだ。 初期的な扱いなら属性に分け目は無い。
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