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「今は剣の腕を磨きなさい」
そう言ってしまえば、ティートは定石の様に「わかってるって」と答える。
それで、この件は一旦お流れになるわけだ。魔導の講師はイゾルデに全て押し付ける気である。
「まぁ、けど・・・ありがとうメイ。今回ばかりは助かったわ」
ティートとの会話を切り上げて、ルサルカはメイに話しかけた。
今回の国境越えは、メイ無くしては実現しなかったからだ。
ティートが怪我をしたと言えども、討伐成功の功績は大きい。
「お得意様だものね~。けど、今回だけよ?」
今回の討伐参加はメイが蒔いた種だ。
今後こんな強引な国境越えは出来ないであろうし、メイもこれ以上行商人の域を越えた働きをするつもりも無かった。
ついつい"傭兵"としての顔を出してしまい、ロドルフォとカッシオも自分達の存在意義にやや自信を失っている。
「ほら、もう、凹んでる場合じゃ無いでしょ~?あなた達の仕事は私を守るだけじゃないんだから、しっかりしてよね♪」
実際、二人は雑用や食事もろもろ、護衛の領分を越えた仕事を頼む事の方が多い。普段の商い中であれば、護衛としても充分に機能するし、メイにとっても必要な人材であり、何より信頼関係が出来上がっている。クビにするつもりなど毛頭無かった。
そう言った内容をそれとなく伝えてやれば、二人はまたやる気になって、メイに親身に仕えるのである。
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