9章 傭兵大国

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「来い、集落まで案内してやる」 これ以上国境前に居座られるのが嫌になってきたのか、隊長自ら案内を買って出る。 「集落?」 ルサルカが聞く。 「亡命した奴が身を置く居住区だ。公にはされてない場所だが、寝泊まりはそこでしてもらう」 いかんせん数が多い。この数で町にでも繰り出そうものなら、町のギルドが黙っていない。 集落───通称"魔女の村"。 亡命するのは大半が女性である。 その女性も、当然魔女の嫌疑をかけられて逃げて来たものであり、弾圧から逃れる為に高い金を払ってグラウデンへ入った。 しかし、亡命した"女性"が生きていけるほどグラウデンは甘くは無い。 その為の駆け込み寺が、"魔女の村"だ。 そこには女性しかおらず、魔女嫌疑の亡命者のみが住む"陰気な楽園"である。 「(それだけ女性がいれば、当然本物の魔女も紛れ混んでいる可能性が高いわね・・・)」 本物の魔女・・・即ちイゾルデだ。 「女は集落から出るな。闘技場へ行きたい奴がいたら言え。俺がグラジオラまで連れて行ってやる」 女は当然闘技場にも参加出来ないし、見知らぬ女の観戦を良く思わない連中もいる。 魔女狩りこそなかれ、女性にとっては何かと居心地の悪い剣闘の聖地グラジオラである。 「(・・・アルスマグナの件、聞かない方が良さそうね)」 一ヶ月、女性は集落に缶詰にされそうだが、ルサルカはそれを受け入れる気は無い。何処かで抜け出してアルスマグナと面通しをする算段だ。 「着くまでに着替えておけ。そんな格好じゃ軍に間違われる」 百余名の大移動だ。甲冑を纏っていれば、明らかに軍隊だと思われる。 特に聖処女軍の兵は平民出ながら甲冑が板についていて、妙に気迫もある。 集落につくまでにどれだけの口止め料を払うのか、隊長は考えただけでも憂鬱になった。 一人頭10万と言う通行料は、その何割かは道中での口止めに使われる。 1千万Gのうち、最終的に手元に残るのは700万といった所だ。 それでも充分過ぎる額ではあるのだが。 王制の放任主義が、こういった収賄などの腐敗を生むが、魔女の福音にとっては有り難いことだ───。
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