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目の前がぼぅっとする。
僕は何をしていたんだったっけ?
朦朧とする意識の中で思い出そうとするが、何が起こったのかよく解らなかった。
ただ、自分が今 どこかの部屋の一室のベッドの上にいる事は明らかだった。
何でこんな所に居るのだろう?
少しずつ視線を動かしていって、隣に男と同じベッドに横たわる女がいた。
男は女に声をかけてみたが、女は何も返事を返してこない。
男は視線をベッド付近からもう少し上げてみた。
ここはどうやら、ビジネスホテルか何からしい事が建物の造りで分かった。
とにかく、ここから脱しなければならない。
男は両腕に力を入れようと試みた。それでも、腕は上がるどころか、びくともしない。
男には体を動かす力は残されていないのだ。
そんな時に1つしか無いドアが叩かれた。
「ここを開けるんだ!早く!」
開けろと言われても開ける力を残していないのだ。不意に脳内に大分前に読んだ推理小説の内容が浮かび上がって来た。
――君等は密室に気付かない。何故なら君等は皆、もうこの世のもので無いのだから――
なんだか急に笑いたくなったが、顔に力が入らず、変に呼吸音が漏れただけになった。
隣に居た女の方へ視線を動かす。彼女はこちらを見て何か呟いた。
「幾星霜、世界は繋がる」
彼女には前編を、僕には後編を合言葉に二人はフラフラする頭を上げて扉の前にたった。
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