3人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
三上愛子はごく普通の美大生で、専攻は西洋画。特に北欧の町並みを描くのが好きな本当に普通な学生...。
母は作家で父は陶芸家。芸術肌な両親から当たり前に筆を握らせられ、当たり前に描きはじめた風景画...。その時に、私の人生は絵を生み出す為にあると何と無く感じた。
最近、ある事によって両親からの監視を受けているが、今日で監視からおさらば。サヨナラ。
そう、大好きな彼からの連絡...。
あの日、彼と決めた合言葉が自然と唇を割った。
「幾星霜、世界は繋がる」
私達も、この合言葉と同じ様に幾度も愛し合い、繋がってきたのだ。これ以上、離れ離れなのは堪えられない。
彼の連絡では、三日後仙台から出るバスに乗るよう指示された。
あと三日...。 あと三日で今の生活から抜け出せる。
三日後、仙台駅で彼 村山透 と待ち合わせた。
時刻は待ち合わせの時間より5分は早い。 その場で頻りに周囲を気にしていると前方から彼の姿が現れた。三ヶ月前に会った時と比べると少し痩せた気がする。
「あ、愛ちゃん。」
「トオル君!!」
この呼び方は、高校生の頃から寸分も変わっていないお互いの呼び方だ。愛子も透も周囲に付き合っている事が知れるのが恥ずかしく思い、最初からの呼び方を突き通していた。
そのため、どちらもどのタイミングで呼び方を変えていいのか 分からなくなり、結局学生時代から寸分変わらない呼び方を続けている。
「良かった。...ちゃんと会えた...。」
「ねぇ、やっぱり...アレ。言うべきじゃない? 幾星霜...」
「世界は繋がる...だろ?」
「うん。本当にトオル君だ。夢じゃない...。」
「うん。...愛ちゃんから突然連絡が来て、待っているって言うんだもん。びっくりしたよ。」
「え?」
どういう事だろう...。連絡をくれたのは 確かにトオル君の方だった筈だ。
「どういう事?連絡はトオル君からきたんだよ?」
そう言って、愛子は自分の携帯電話の画面を透に見せた。
最初のコメントを投稿しよう!