始まり

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彼は、驚きの様相で首を横に振った。  「違う。違うよ。これは僕が送ったんじゃ無い。それに、このアドレスは僕のじゃ無いよ。」 透は直ぐさまズボンの尻ポケットに手を突っ込み、愛子に自分の携帯電話の所有者情報の画面を見せた。  「本当だわ...。」 納得したように頷きながら携帯画面を眺めていた愛子だったが、画面から視線を上げて、透に声をかけた。  「ちゃんとお互いの連絡先を明かしておきましょう。きっとこの先何かあるに違いないわ...。」 この先、何かが起こりそうな予感を愛子は感じざるを得なかった。 意図して二人を再び逢わせ、そして何か不吉な出来事にこれから出くわす様に企んでいる第三者の存在がその宛先不明のメールは物語っている気がしてならない。  「...やっぱり止めておく?」 顔を覗き込みながら、透が愛子に声を掛ける。その表情がニヤついている。  「...な、何?」  「愛ちゃん...もしかして、怖がっているのかなと思ってさ。」  「こ、怖くなんてないわっ!!」  「じゃあさ、何か起こるって決まった訳では無いし、とにかく参加してみない?」 透に押される形で、しぶしぶ私は了承してしまった。 指示されたバスには "※"マークのステッカーが貼ってあると先程のメールは語っていたが、問題のバスの姿が見当たらない。  暫くした後、一台のバスが近づいてきた。例のステッカーを昇降口とフロントに貼ったバス...。あれは間違いなく指定されたバスだろう。
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