始まり

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そのバスが目の前まで来てから、停車し、昇降口の扉が開いた。 ...まるで、乗ることを承知している様に正確に、出迎えに来ている様に当たり前に...。 添乗員に名前を告げると、バスの中に乗るように促された。それに応じるように、バスの狭い通路を透を先頭にして歩き、中程の二人掛けのシートに並んで座った。 着席したのを添乗員が確認してからバスは静かに発進した。その後時間が空くこと無く、添乗員がニッコリと笑みを浮かべながら話始める。  「皆様、この度は私共、"陽炎ツアー"にお越し下さり誠に有難うございます。今回、2泊3日の長旅にお付き合いさせていただくのは私、林小五郎と運転手の郷田です。皆様宜しくお願いします。 さて...、皆様がこれから向かうのは...」 ぶつぶつと業務的なアナウンスをしている添乗員の姿をまじまじと眺める。紺色のスーツにワックスで固められた髪型...。磨き上げた革靴...。見た目からも喋り口を聞いていても察するに、生真面目な人間そうだった。  「この山荘には...主であった烏丸氏の財宝が眠っていると噂されていて...」 ...先程から聞いていると、このツアーの目的はどうやら財産探しのようだった。 それにしても、こんな胡散臭気なツアーに一体どんな人間が参加しているのだろう? 怪しまれない程度に周りを見渡してみる。 年齢や性別なんかは皆バラバラ。若い奴もいるが、十分老いた奴もいる。 そこではっとした。このツアーの目的…それ自体に狙いがあるのだ。つまり…  「金の亡者共の集まりって所だよね。」
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