始まり

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隣で、声を顰めながら透は口にした。そうに違いない。そして、ここに自分達が呼ばれたのは…  「僕等は保険って所かな?どうだろう愛ちゃん?そう思わない?」  今しがた自分が思っていた事を、透の言葉が語っていた。 私自身は金を持っている訳ではないが…実父、三上 寛治郎は名だたる陶芸家であるし、母にしたって(父ほどの知名度は無いにしろ)数作のベストセラーを世に出す小説家である。 そして何よりも…。両親はわが子を溺愛している。それは嫌というほどの承知の事実だ。 透にしたって、母はごくごく普通の専業主婦だが、父親は大手金融会社の総務長だと言っていた。 そして、彼もまた何不自由なく育てられ、両親にこれでもかというくらいの愛情を受けて育った。  …いわば、私達はこの亡者共には打って付けのカモとなる。 最悪、財宝が見つからなかったとしても、私達を人質にでも捕れば、私達の両親は札束を積む事だろう。 色々考えている内に、周りのツアー客全てが怪しく思えてきた。 そう思うと、余計に周りを気にしてしまうのが人間の性というもので、見渡せる範囲で辺りを警戒していると、肩をとんと叩かれ透にたしなめられる。  「あまり、変に意識しない方がいいよ、相手の出方を見てから行動に転じよう。まだ何か起きると決まった訳じゃあるまいしさ。」  それもそうだな、と私は疑心を拭う事が出来た。
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