第一章 発端…

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その中から、俺が勝手に勇者時代に学ランを改造して作った服を取り出した。 耐熱、耐寒性に優れ、そのうえ、破れにくく、衝撃緩和魔法、自動回復魔法の魔方陣がこの制服の生地に編み込まれている。 しかも、生地も伸び縮みするため、動きやすい。更に発動しようと思えば認識阻害魔法も発動出来るので、勇者時代に愛用していた。 まさか、また使うことになるとは思わなかったが。 で、亜空間から食事を取りだし、ひたすらに食べた。 物置のような所でも意外と何とか出来るものだと痛感しながら、床に雑魚寝をして睡眠に入った。 ~???~ ん、んん、えっと、俺は寝たはず………………だよな?意識があるってことは………………まさか……………… 「主よ!会いたかったぞ!」 【だきっ!】 いきなり、淡い栗色の髪をストレートに伸ばした、身長150㎝位の美少女が飛び付いてきた。 「おおっと!元気だったか?」 ちなみに俺は身長が170㎝位あるので、受け止めるのはさほど苦にはならなかった。 「それはこちらの台詞じゃ!主のいた世界では魔力があまりなく、妾の力は衰えるばかりであったからの」 彼女はリリィ。元々は精霊だったため、名前はなく、俺が勝手につけた。 いきなり召喚されて、右往左往していたところに手を差し伸べてくれたのも彼女だ。 「っと、そうか、だから2年間あまり話ができなかったんだな」 「そうじゃな…………でも、今はもう大丈夫じゃぞ!」 そう言って彼女はニコニコと微笑んだ。 「それにしても主はまた面倒なことに巻き込まれてしまったようじゃのう………………大丈夫なのかえ?」 「心配してもらえるなんて、俺はやっぱ良い仲間を持ったな!まぁ、心の傷は治ったまでは行かないけど、少しは良くなったわけだし、大丈夫だよ」 【だきっ!】 感極まって俺はリリィを抱っこした。 「こ、これ!降ろさんか!無礼者!」 「しょうがないじゃん、こんな所でしか俺はちゃんと扱われないんだから」 周りには誰もおらず、俺とリリィだけである。 ここは、夢の中で、リリィの力で俺は寝ながらにしてリリィとこうして会うことができるというわけだ。
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