第一章 発端…

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「ふむ、主の体に誰か近付いてきておるな」 こんな夜更けに何だろう? 「で、どうするのじゃ?」 「あぁ、ごめん、そろそろ起きるわ」 「妾の力は戻ってる故、いつでも念話出来る状態にあるぞ」 「うん、暫くしたら、また呼ぶことになるかも」 「では、の」 「うん、また」 ~ディレク城/物置部屋~ さて、目は覚めたが、周りに確かに気配を感じる。しかも、気配を殺しながら迫ってきている。 こんな不自然な迫り方をするのは暗殺者位ではないか? 俺はまだ目を瞑ったまま、何をしてくるか様子を見ているが、一向に進展がない。 仕方ない、こちらから仕掛けることにした。 魔法を使用するための詠唱を頭の中で済ませる。 (我が求めるは木々の枝、絡めとれ!<ブランチ・バインド>!) 魔方陣は、常に発光しているので、暗い部屋だと、確実にばれるのだが、それは目に写ればの話。 相手の靴の裏に一つずつ魔方陣をセットすることで、迅速に、かつ確実に足を絡めとることが出来る。 【バタン!】 「きゃっ!」 女の声!?俺は慌てて部屋にフラッシュの魔法を唱えて周りを照らした。 「誰だ!」 「こんな失敗は許されない!死んで!」 黒いマントに黒いズボン、更に黒いお面。 まるで忍者の服のようなものに身を包んだヤツが、いきなりナイフを投げてきた。 【パシッ!】 「あっぶな!」 すんでのところで、ナイフの柄の部分をキャッチする。 「え!?聞いてないよこんなの!」 まぁ、依頼されたんだろうな……………… 大方予想はできてるけど、一応確認……………… 「我が覗くは記憶の片鱗、現せ!<メモリーズ・ドロー>!」 俺の目は、5時間ほど前の国王に直々に依頼を受ける彼女と同調した。 『よいな、絶対に失敗は許されぬ。ヤツが勇者ではないというのであれば、暗殺は容易いであろう。ヤツは勇者にとってはかけがいのない存在。上手くやれよ』 『はっ!』 命令をする王は、いかにも間抜けな顔をしていた。 見終わった感想は、浅はかの一言に尽きる。 そもそも、俺が殺されたら、犯人は城の誰かってことになるだろうし、そうなったら、真也は勇者になってくれないだろうに。 うん、馬鹿だねぇ! これは………………そうだ!王様に抗議にいこう!
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