第一章 発端…

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~ディレク城/王の寝室~ 空もだんだん明るんできた頃、王様の寝室にこっそり潜入した。 【トントン】 俺は寝ている王の肩を叩いた。 「もしもーし」 「う…………うん…………?ハッ!?お前は死んだはずでは!?」 「勝手に人を殺すなよ!てか、考えなかったのか?俺を殺したら、真也が勇者にならないだろうってことをさ」 少し上から目線な俺に不服なようで、王はむすっとしながら答えた。 「山にでも放り投げておけばばれまい」 「それでも、俺の姿を見ない真也は不振に思うだろ?」 「そうしたら、レイ殿は旅立ったとでも言っておけばよいことだ。それよりもなぜお前が生きている?」 なるほどなるほど、心の芯から腐ってるのか………… 「あぁ、俺のところを殺しにきた人ね。今は俺の部屋で睡眠中」 「ヤツに何をした!?」 まぁ、きっと国のお抱えの暗殺者だから、心配もするわな。 「安心しなって、なにもしちゃいないよ。さて、俺がここに来た理由だが、もう少しこの城に居させちゃくれまいか?そうすれば、彼女も返す。悪くないだろう?」 王はワナワナと震えだした。 「脅す気か貴様!」 「交渉さ。脅しも立派な交渉ってね」 「くっ!仕方ない。だが、2日間だけだぞ!そうしたら、出ていってもらう!」 まぁ、そのくらいあれば充分かな? 「いいだろう。では、あんたの記憶を少しいじらせてもらう。まぁ、これすらも忘れるけどな。我は変える。記憶の片鱗<メモリーズ・ドロー(改)>!」 これで王様は誰と話したのかを忘れ、なんとなく俺をこの城に2日間だけ居させようという気になったと思うだろう。 暗殺者の方にも同じ魔法をかけておいたため、事実上この暗殺の一件は無かったことになり、めでたし、めでたしだ。
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