第二章 これから…

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~エスウト/宿屋 妖精の止まり木~ そうして市場を歩き続けると、一つの宿屋の前にたどり着いた。 そこは、木造の、そこまで大きくもなく、かといって小さくもない、一般的な二階建ての宿屋だった。 「もう、ヘトヘトだよ~早く宿に入ろ?」 「そうだな、入ろうか」 【ギィィィ】 木の軋む音をたてて中に入ると、即座にアルコールの匂いがした。 この宿はロビーが酒場と併合されているようだ。 飲んでいる人たちに目をつけられないようにしながら、受付を探し、この宿の女将であろう人に話しかけた。 「すいません!」 「あら、いらっしゃい!何名様だい?」 「あ、二人です」 この宿に入る前に、使い魔たちには俺の中に入っててもらった。 「そうかい、一部屋で良いかい?それなら、一泊二日、三食付きで銅貨24枚だよ」 足りねぇじゃん! 「今、銅貨12枚しか持ってないんですけど、一泊だけお願いできませんか?」 「金のないやを泊める義理はねぇ!と、言いたいとこだけど、なにせ、ご新規様だからねぇ……………………いいよ、一泊だけしていきな!ただし、あんまり綺麗な部屋じゃないんで、覚悟しな!」 女将さんらしき人はにっこりと笑い、そう言ってくれた。 「ありがとうございます!」 ~エスウト/宿屋/レイ(凛)の部屋/夜~ 案内された部屋は、確かにお世辞にも綺麗とはいえないような、ひどい有り様だった。 「これは…………………………」 「あぁ、酷いな」 ベッドは埃だらけ、それどころか、長年放置されてきたのか、コウモリの糞らしきものが落ちてたり、最悪だった。 「ちょっと凛は外に出ててもらえるか?」 「ほへ?お兄ちゃんは?」 「大丈夫だから、いいと言ったら、中に入ってくれ」 「うん、分かったけど」 ちょっと不満そうな顔をしながら、妹は部屋を出ていく。 【バタン】 妹が完全に出ていったのを確認して、俺は掃除を始める。 「微風よ、我の指し示す道を吹き抜けろ!<ブリーズ・コントロール>」 城でやったように、緑の魔方陣を展開させると、中からそよ風が出てきて、指で描いた軌跡の通りに、吹き抜け、埃を掬いとった。 「よし、完全に綺麗になったな!もう入っていいぞ!」 【ガチャ】 入ってきた妹は、少しふてくされていた。
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