第五章 脇役を決意した日

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~東の町 スートイ/ショップ:サキュバスの美徳~ むぅ…………[雷鳴の追跡者]は、顔が割れると俺が目だっちまうしな………なかなか信用されない代わりに犯罪の抑止力になっている。そう考えると、現状維持の方がいいかも? と、考え込んでいても意味はないのだが…………まぁ、気を紛らわせるために思考の海に沈んでいた訳だが、何のめに気を紛らわすのか………? それは………今現在、服屋の下着コーナーに来ているからだ。 いや、別に俺が変態で、勝手に一人で入店したわけではない。 「主よ、ぼうっとしてどうしたのじゃ?」 リリィに声をかけられて、そちらに目を向けると……………花柄の、上下黄土色の下着を着けたリリィがいた。 「な………なんて格好してやがる!普通に服着なさい!」 慌てて顔をそむける。 店内で、大声を出せば、勿論注目されるわけで、しかもここは女性用の下着コーナー。 男が少しも見当たらない。 と、いうことはさらに目立つわけで……………もう帰りたい…… 「ちょっと!なんでアンタこの場所にはいってんのよ!」 シャーというカーテンの開く音と共に隣の試着室から声が聞こえ、そちらに目を向けると、水玉の下着一枚の格好でいるユティがいた。 「ぶはっ!………お前もかよ!」 やべぇ……………このままでは獣になってしまう。考えろ!考えるんだ俺!獣にならないために。 「ちょっと!何見てんのよ!」 【ゲシッ】 「ゲフッ!」 蹴りが飛んできた。 痛い、マジで痛い。 けど、同時に煩悩も消し飛んだので、グッジョブ! 「いつつ………スマンスマン、眼に飛び込んできたから、背けようがなかった。」 【フイッ】 やっぱ見られんのは嫌だよな。 「(別に見てもいいのに………いきなりだから蹴っちゃった)」 なんかボソボソ言ってるけど聞き取れませぬ。 「何か言ったか?」 下を向きつつ言う。 「な………何でもないわよ!それより、何で下向いてんのよ!?」 ゲシッとさらに鋭い蹴りが飛んできた。 んな理不尽な!? 「え?い、見られるの嫌かなっ…………………げぼぁ!?」 容赦のない蹴りが腹に打ち込まれた。 「見るなとは一言も言ってないでしょ!?」 「え?じゃあ、見てもいい……………………げぼぁ!?」 やはり、腹にもう一撃食らった。
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