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~東の町 スートイ/宿屋/屋根の上~
どうにかあの場を抜け出した俺は今、宿屋の屋根にいる。
仮眠をとろうとしたしたはずなのに、もうすっかり辺りは暗くなって、星が綺麗に瞬いていた。
「ふぁ~………」
欠伸まで出て来たので、ここで少し休むことにする。
目を閉じると、すぐに眠れた。
~30分後~
なんだか、良い匂いがする。
花のような、甘い感じの……………む?
屋根なのにそんな匂いするか?
「あ、やっと起きたわね!」
起きると、ユティが居た。
「あれ?ユティだけなのか?他の皆は?」
そう、周りには誰もおらず、ユティだけが居た。
「フン!アタシだけじゃ不満なの!?」
おお!?失言だったか…………
「ウッ………蹴るのは勘弁!」
本当に痛いからな…………
「そうそう簡単には蹴らないわよ!」
およ?そうなのか…………つか何で蹴るんだろう?
「なぁ、何でユティは俺の所をそんなに蹴るんだ?」
少しスゥーハァースゥーハァーと、ユティは深呼吸してから、話し始めた。
「アタシだって、アンタと普通に話したいわよ!けど、なんか胸の奥が熱くなって、脈が早くなって、耐えきれなくて暴走しちゃうの!これって病気かな?」
う~ん…………………………?
「さぁ?とりあえず、皆には聞いたのか?」
「ううん、何か恥ずかしくて聞けなかった…………」
ユティがしゅんとしているのは珍しくて、少しドキッとした。
「まぁ、とりあえず、皆に聞いてみろよ、何かわかるかもよ?」
「うん……………」
ここでその話は途切れて、俺から今日の魔物の大量殺戮についての話をした。
ただ単純にもう少しユティと話がしたかったのかも。
後悔なんて、他人に聞いてもらっても意味ないんだけどな…………
「はぁ…………魔物の皆に悪いよなぁ…………まだ生きたかっただろうに………」
そんな愚痴を黙って聞いててくれたユティが口を開いた。
「はぁ…………アンタ底抜けのお人好しね!皆に悪いとか思ってるんだったら、いつまでもウジウジしてないで前見たらどうなの?そうしないとアンタに殺された魔物が報われないじゃない!」
確かにその通りなんだけど、
「それに、アンタが暗いとアタシまで調子狂うのよ」
ふむ………………こんな風に説教されたら、改めない訳にもいかないよな!
俺はパチンと自分の頬を叩き、気分を入れ換えた。
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