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「なに?」
「え……あーいや、今日は部活のピンチヒッターやらないのかと思って……」
いきなり私が顔を上げたからか、しどろもどろに話す。
私は専属の部活には所属していないため、あらゆる部活からピンチヒッターをお願いされる。
もちろん、断りたいときもあるんだ。
「あー今日は気分がのらなかったから全部断った」
「相変わらずだな」
「そりゃどうも。じゃ」
まだ何か言いたそうだったけど、そんなのお構いなしに私は教室をあとにした。
はっきり言って私は鋭い。
人間関係にしても空気にしても人の心にしてもすぐに読み取れてしまう。
たぶん……大高は私を女として見ているような気がする。
だから大高と2人きりになるのはなるべく避けていた。
友達としての付き合いをしっかり感じさせるように、この距離を保っていかなければいけない。
……愛花のためにも。
あいつは大高のことが好きだと思う。
でも気づいているんだ。
大高の気持ちにも。
「はぁー……感受性が強すぎるのも嫌だな」
誰もいない廊下に私の小さな声がやけに大きく響いた。
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