第3音

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私の声を聞き逃さなかった春日井先生は、え?と言って私のほうを振り返る。 「知ってるの?」 …いや、彼自身を知ってるわけではない。 漆黒とも言えるさらさらの黒髪に頭がよさそうな眼鏡、堅い雰囲気。 そして、拳銃を突きつけたような冷たい瞳。 この瞳を、私は知っている。 曖昧な笑顔を見せて、春日井先生よりも早く彼に近付いた。 彼の座っている目の前に立って、その冷たい瞳を上から覗き込む。 ますます顔を歪ませて、負けじと睨み返す彼は、とても、寂しそう、だった。 無意識にその瞳へと手が伸びて、青白い肌に触れると。 さっきまでの歪んだ表情はどこかへ消え、体を硬直させて私を怪訝な表情で見つめる。 すっ、と目じりに親指を寄せて、その冷たい瞳の奥にあるものを私は探していた。 「……」 店内に流れるショパンのバラードも、マスターオリジナルのコーヒーの穏やかな匂いも、すべて、シャットアウト。 .
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