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いつだっただろうか。
私が人間と言える立場にあったあの時代はもう遠い昔のようでもあり、昨日のことのようでもある。
昭和90年4月19日。
あの日、私は大切な人と二度と会えなくなってしまった。私の名前はよく覚えている。今とは違う、本当の名前。
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「みのりも、もう己(おれ)の女中として働いて五年も経つんだね」
詰め襟に烏(カラス)を模した金の軍章を着けた軍服を着た若者が少女の頭を撫でる。
「……は……い」
少女の喉には大きな傷があり、どうやらその傷の影響で上手く話す事が出来ないようだ。
「己の妹も生きていたら君くらいの年かな」
「いも……うとと……思ってください」
少女は自分を妹のように、本当の家族のように彼が扱ってくれていることによろこびを感じていた。
「あぁ、だが己も明日は
最後の戦に赴く事になる。
新日州人との最後の戦だ。開国するのは己も反対だった。
外国人が日州(にっしゅう)に移住してくるなんて反対だったんだ」
日州、小さな島国だが志を高く持ち、技術の発展が盛んな国。しかし、他国に比べ人口が少ない国だ。
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