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翌日の土曜日、僕と紫苑姉、千尋は市内のデパートに買い物に来ていた。もちろん、来週からの集団宿泊訓練で必要な物を買いに来たのだ。
「歯ブラシセット、洗顔フォーム、寝癖スプレー・・・あとは・・・」
スーパーエリアで必要な物を探しながら、僕はちょっと考え事をしていた。内容は他でもない。午後からの雑誌撮影の事だ。
間違いなく、父さんは僕に可愛い服を着せようとしてくるだろう。そんな服で魅惑的な表情で、なんて言われたら僕は・・・
「無理!絶対無理だよ~!」
ブリっ娘ポーズでウインクする自分の姿を想像して、僕は思わず叫びながら頭を抱えて蹲る。精神的余裕が無いので、周りから何してんだあの人、って視線を向けられているのに気付いていない。
「・・・・雪?」
「えっ!?」
背後から掛けられた聞き覚えのある男性の声に、僕はバッ!と振り返る。そこには他でもない、蓮が立っていた。
「れ・・ん・・・?どうしてここに・・・?」
「来週の集団宿泊訓練に必要な物を揃えにな。それより、何をしているんだ?」
「に・・・にゃーーーーーーー!」
「ゆ、雪!?」
さっきの奇行を見られていたかと思うと恥ずかしくて、僕は顔を押さえて走り出した。
「はーい、逃げなーい」
「し、紫苑姉!?」
いつの間にか近くに来ていた紫苑姉に、逃げようとした矢先に止められてしまう。放してー!今は!今だけは逃げさせてよぉぉぉぉ!
「おや?君はいつか雪を助けてくれた少年かな?」
「結城 蓮です。彼女と同じ高校に通っています」
「ふーん、私は音無 紫苑。これのお姉ちゃんですよ~」
僕の頭に顎を乗せて、紫苑姉は蓮にパタパタと手を振った。だ・か・ら、僕をスタンド代わりにしないでよ!胸が首元に当たって・・・って、言うか谷間に首埋まってるから!
「雪~、これあんた持ってたっけ・・・って、蓮?」
「千尋も来てたのか」
「何?どういう状況?」
「いや、雪が突然叫んでしゃがみこんだから声を掛けたら、いきなり走り出したんだ」
「あ~」
それで千尋は納得したみたいだ。頼むから、何も言わないでください。反省も後悔もしているのだから。
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