神様の言うとおり。

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「はふぅ・・・」 思わず口から洩れる気の抜けた声に、我ながら可笑しくってちょっと笑ってしまう。蓮もこんな風にお風呂に入るのだろうか、と考えて更に可笑しくって今度はくっくっくっと声を出して笑った。 だって、あの蓮が蕩けきった声を上げながらお風呂に入るなんて思うと・・・ね? でも、ふと考えてみると蓮から普段の暮らしなんてあまり想像したことがなかった気がする。それこそ、暇さえあれば走ったり鍛練してそうなイメージがどうしても拭えない。 蓮も普通の男の子みたいに好きなアイドルとか、アーティストとかいるのかな? テレビではいつも何を観てるのかな・・・時代劇とか? 「・・・ダメだ。分かんない」 思えば、武道をやっていること以外私は自分の彼氏のことをあんまり知らないような気がする。いつも私を助けてくれるのに。 「私って、そんなに薄情な人間だったのかな・・・?」 あまりにも彼がそこにるのが当たり前になってしまっていて、それ以上踏み込もうとしようとしなかった。そして、そのまま今に至っている現実。 「あ、でもこれってチャンスじゃない?」 今私は彼の自宅にいる。ならば、当然彼の部屋もあるはずでそこには彼の趣味嗜好を示す何らかの物があるはずだ。蓮を知るための何かが。主にベッド下や押し入れの下の方に隠してある本とか。 「べ、べべべ、別に私は興味ないけど、蓮がどんなの好きか知る必要があるの!彼女だから!」 と、誰に言っているのか言い訳をしばらく吐き出してから、私は意を決して浴槽から飛び出して備え付けのシャンプーと石鹸でさっさと髪と体を洗ってもう一回浴槽に浸かってからお風呂場を後にした。 タオルを洗濯機に突っ込んでおいて、この数カ月ですっかりマスターしてしまった女性服を身につけて脱衣所を出ると廊下には人影どころか人の気配すらなかった。 「よし、行きますか」 とりあえずは蓮に言われた通り左に進む。右はさっき通ってきた道だし客間なんかがある部分らしい。そして、左に居間があるならそこから遠くないところに家族の生活スペースが集まっていてもおかしくはない。
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