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「よーし皆、席に着けー。今日は転校生を紹介する。」
先生の声にザワザワしていた教室が一瞬で静かになる。
「入りなさい。」
その言葉に、おずおずと翔が教室に入る。
皆から向けられたのは好奇の目だった。
(ああ、やっぱり・・・)
翔は泣きそうになるのをこらえて何とか皆の前に立つ。
「要翔君だ。皆、仲良くするようにな。要、自己紹介。」
「は、はい。か、要翔っていいます!よ、読みにくい漢字ですけど、よろしくお願いします!。」
最後の言葉と一緒に翔は頭を下げる。
パチパチと拍手が聞こえる。
「か、要・・・、もういいぞ?」
いつまでも、頭を下げている翔を疑問に思ったのか、先生が声をかける。
「あ・・・、すみません・・・。」
翔は緊張で真っ赤になった顔を上げる。
「よ、よし。じゃあ席は前田の隣な。」
先生は前田という子を指さして言う。
「よろしくね、要君。私は前田紀子。」
隣に座った翔を見て紀子はにっこりと人の良さそうな顔で微笑んだ。
「よ、よろしく・・・。」
翔は紀子の笑顔を見てほっとし、少々どもりながら微笑み返す。
翔が菜津と出会うまであと、半日。
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