封印

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「本当にそんな体験を?」 女性タレントに再び体を向ける。 「はい、本当なんです。その時も突然、夜中に目が覚めたんです。 でも驚いたことに、眠っている自分が見えるんです。 その時は怖くなりました。 自分が浮いているんです」 「それでそれで?」 「ふわふわと飛んでいる自分に嬉しくなって、私は家から外に出て色々なところを飛んで回ったんですけど、突然、帰らないといけない、という危機的な考えがよぎって自分の体に戻りました。 気がつくと朝を迎えていたんです」 それを聞いた司会者は、渋い表情を浮かべて腕を組んだ。なるほどねぇと頷き、 「僕には想像がつかないな。 一度もそういう体験はないですからね。 でも小さい頃に、怖い話や噂話で盛り上がった記憶はありますね。 自分達で怖い噂話を作ったこともあったなぁ」 噂話……。 武は反射的にテレビの電源を消していた。 静寂が訪れた。 一つ息を吐いて、ベッドから立ち上がり、武は勉強机の前に座った。
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