電波に乗せて。

4/26
107人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ
「羽鳥…亜弓」 『はとりあゆみ?』 その場で、コクン、と音が鳴るんじゃないかってぐらい、大きく頷いた。 頷いたって、この電話口の彼には分かるはず、ないのに。 『へぇー。 俺の名前は、郡司望。 覚えといて。じゃ、また電話するから』 「は……」 一言言うのも虚しく、向こうから電話を切られる。 ――ぐんじ、のぞむ? 第一印象、失礼な間違いヤロー。 名前を訊いたからと言って、何かが起きるわけでもない。 この一時も、郡司望の中で、直ぐに消え去るに決まってる。 だから、この番号はもう二度と、表示することはないんだろうな。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!